「痛みは我慢すべきか」兵庫県川西市/ふかみレディースクリニック 婦人科・産科・麻酔科(ペインクリニック)

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大昔、私がカナダの理学部の学生だった頃、痛みの生理学の授業中”東洋人にはあまり鎮痛剤は必要でない。必要としても白人の半分程度でいいようだ”と雑談で聞きました。それから時がたち私は日本で麻酔科の医者となりましたが、たしかに日本人(他の東洋人は知りませんが)は鎮痛剤を欧米人ほど使わないようだということをいろいろな話や場面から知りました。たとえば、他の国々と比べ日本の使用量が大変少ないモルヒネに対する一般の印象です。啓蒙により最近はモルヒネの使用量も以前に比べ増えてきているようですが、少し前までは癌患者の痛みをモルヒネで軽くすると早く死んでしまうという話をよく聞きました。”モルヒネは死を招く縁起の悪い薬なので、できる我慢はして最後に使う。”といった扱われ方です。腰痛など一般的な痛みでも薬や注射で軽くするのは根本的治療ではないので体に悪いといった話を患者さんから時々聞きます。本当にそうなのでしょうか。手術後の痛みや癌患者の痛みをモルヒネをふくめあらゆる方法で軽減することは寿命を縮めるどころか手術後の回復を格段に早め癌患者の寿命ものびるという報告があります。痛みは異常が起こっていることを知らせる役目が終わればすみやかにとりさり体に休息をとらせ快適に過ごせるようにする。そして考えられる原因を探す。それが”体にいいこと”なのではないでしょうか。しかし、痛みの原因は、はっきりと見つかり治せることもありますが、見つかっても老化現象の結果による痛みのように根本的かつ完全には治せないこともしばしばあります。原因がひとつでなく複雑に絡まってはっきりしない場合もあります。そんな場合でも使える医療技術を利用し痛みを軽減する努力をして体に休息を与えることはたとえ完治しなくても生きるうえで大切なことのように思います。